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喰切料理の阿じ与志 (広島県福山市)

阿じ与志は魚料理屋。使っているのは、掛け値なしに最高の食材だけ。
冬のふぐが看板ですけど、鯛、石鯛、あこう、鱧、がざみ、など、
その時季でいっとう美味い、瀬戸内海の魚料理が食べられます。

女将は「うちの料理はおかずじゃなくて、酒の肴(さかな)だから、、」といいます。
はじめのころは何のことか解らなかったが、きっと、こういいたかったのです。

阿じ与志は喰切りの一品料理屋。食事をするところじゃありません。酒を飲むところ。

Ajiyoshi20071215

喰切料理は、一品ずつ、できたての料理を食べる形式です。
日本酒を美味しく飲むための料理で、酒菜(さかな)といいます。

だから、量より質、少しでいいから旨いものを、というのが基本です。
とにかくズドンと満腹したいという大食漢の方には向きません。

とはいえ、阿じ与志の一品料理は、美味さを味わえるだけの量はあります。
お雛様が食べるほどのちょっぴりで、見た目ばかりの女々しい料理とは違います。
簡素で、力強く、清浄で、すべてが行き届いている。日本の美しさがあります。

もう師走の中日。大阪からいらっしゃったご夫婦も含め、楽しいお客さんで満席です。
品書きを撮るつもりが、珍しいシーンになりました(正ちゃん。入ってなくてごめん)

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河豚ひれ酒 (阿じ与志 広島県福山市)

「いつものように、ビールにします?」と正ちゃんに聞かれましたが、
喰切り料理のたしなみに倣い、本日は日本酒でとおすことにしました。

Hiresake

阿じ与志のとらふぐ鰭酒

ひれ酒のまろやかな旨みは、鰭に含まれたゼラチン質のコラーゲンです。
だから、熱々燗じゃないと、よく溶け出しません。

ひれ酒の香ばしいかほりは、きつね色に焼くからでます。
阿じ与志のふぐ鰭のように分厚くなくても、
充分に火をとおさないと生臭くてダメです。

火をつけるのは、かすかに残る臭みを消すためという説もあります。
長く火をつけていると、酒のアルコール分が飛びますので、
お酒に弱い方は、このやり方で調節するといいですね。

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銀杏料理 (阿じ与志 広島県福山市)

つき出しが出ました。銀杏です。艶々として、瑞々しい。
そういえば、今年は温暖化のせいか、紅葉も遅かったね。

Ginnan

柔らかくもっちりしてます、えぐみもなくて、甘みがあります。

食べていると、ずっと昔のことを思い出しました。うちの子供たち、
神社の境内で一面に落ちた銀杏を、一所懸命に拾って喜んでましたが、
そのうちに手がかぶれ、べそをかいてたことがありました。皆さまもご用心!


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ブリ刺身 (阿じ与志 広島県福山市)

鰤(ブリ)はめでたい魚として、関西では正月に欠かせませんが、
冬は脂がのって、もっとも美味い時季なのです。越前の寒ぶりは有名ですね。
今夜は、その寒ぶりがでました。う~ん。思わず、うなりました!

Burisashimi700

阿じ与志のブリ料理 寒鰤刺身 (クリックで拡大します)

きれいなピンク色の腹身。美しく霜降りしています!
見ただけで、極上物の天然鰤とわかります。うまそうです。

腹の筋肉のすき間に脂を蓄えるので、霜降り状になるのだが、
寒ぶりは筋肉が発達しているので、すき間もごくわずかだ。
それでこのように繊細な模様の霜降りになるのだろう。

ぶよぶよで脂っぽいだけの養殖物とは、次元が違う。
自然の厳しさが作り上げた美味さだ。これは最高です。
大蒜の葉をすり込んだ酢味噌が、実によくあっている。

今日も来てよかった。阿じ与志には感動があります!

注)今年は例年になく不漁なようです。新聞記事(2007/12/17 asahi.com)によれば、

冬の味覚「寒ブリ」の本場・富山県氷見市で不漁が続いている。市によると、今シーズンの氷見漁港への水揚げは約1400本。14日現在で昨年より5000本以上も少なく、1本もない日も出ている。15日の氷見漁港への水揚げは5本だった。
ブリは初夏に北上し、初冬に南下し始める回遊魚で、氷見の寒ブリ漁は例年12~1月が最盛期だが、今シーズンは7日の213本が最多。県水産試験場は「水が温かいのでまだ富山湾まで来ていないのでは」とみるが、原因は定かでない。
価格も急騰中だ。昨年のこの時期は1キロ当たり3000円程度だったが、今年は、その6倍を付けた日もある。市内のある民宿は「仕入れ値は昨年の倍くらい」という。

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尾道のデベラ (阿じ与志 広島県福山市)

やっと今日届いた。といいながら、店主、何やら包み紙から取り出しました。
縄につぎつぎとさされた小さな平目。そう、尾道の冬の風物詩「デベラ」です。

Debera

このデベラ、船頭が一本釣りで獲ったものを、その船でさばき、その船で干したもの。
こんな昔ながらのやり方で作ったデベラは、今や希少品。(ほとんどが熱風乾燥もの)

活きがいいのを、すぐ、海のど真ん中の潮風で干すから、いい味がでる。
美味いのが知れちゃって、なかなか回ってこなくなったと、店主はぼやきつつ、

デベラをまな板の上に置き、金づち(木槌じゃありません)で、おいおいというほど強く、
全身まんべなく、くまなく、根気よくたたいてます。まるで親のかたきです!
あとは、ちょろっとあぶって、出来上がり。

縁側から、背骨、中骨、みんな小さく砕かれているので、丸ごと食べられます。
干しサヨリと似た香り~潮のかほりだ~があります。鮮度がいい。

学生時代、東京の大家さんへお土産にデベラをもって行きました。
見たこともなかったようで、どうやって食べるのか聞かれましたが、
親の仇ほどたたくと、こんなに美味く食べられるとは知らなかった!


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とらふぐ白子塩焼き (阿じ与志 広島県福山市)

もしあなたが、ふぐの白子をまだ食べたことはないけれど、
トラフグの白子とは、 この世で一番美味しいものである。
という「美味しんぼ」の言葉は知っているという物識りな方なら、

白子は食べたこともないような濃厚な味だろう。と想像するかもしれません。
たとえば、フォアグラやキャビア、あるいはトロのような・・・

でも、期待を裏切るようですが、
とらふぐの白子は、最近の子供なら味がない、というほど淡白な味なのです。

Fugushirako

阿じ与志の天然とらふぐ料理 とらふぐ白子塩焼き

白子は塩を少しふり、焼いてあります。薄皮の中はとろっとしたクリーム状ですが、
クリームのような脂肪味はまったくなく、ほのかに甘いとしかいいようがありません。

塩は、白子のもつ旨みをくっきり引き出す役目で、ほんの少しで効果があります。
塩焼きなら塩味かと勘違いするような人は、もう日本人じゃないのかも?

ふぐ白子のような微妙で繊細な味を愛でる国に、いつまでも暮らしたいものです。

えらそうに聞こえたらごめんなさい。年末になると、白子の初物にありつけます。
今年は水温が高く、発育が遅れているとのこと。まだ長径4㎝ほどで小さいですが、

「充分、味がでているから、早くたべてみろ」と店主が目でせかします。
おっと、阿じ与志は喰切りだ。焼きたての熱いうちに食べましょう。

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とらふぐ料理 鉄刺 (阿じ与志 広島県福山市)

ふぐは雑食性の魚ですが、海老、蟹、貝などはとくに好きなようです。
その連想からか、天然とらふぐはエビやカニの味がする。との新聞記事を読みました。
真偽を確かめるべく、阿じ与志の鉄刺を、ポン酢もつけず、じっくり味わってみました。

どんなにかみ締めても、エビやカニの味はしない。では、味はないのかといえば違う。
銀シャリの美味さは例えようもないが、ではどんな味かと聞かれても答えようがない。

Fugusashi

阿じ与志のとらふぐ料理 鉄刺(てっさ)

ポン酢醤油というたれが、ふぐの旨みを引き出す。たれも薬味の紅葉おろしも、
主役を引き立てる脇役で、前にしゃしゃり出てはいけません。
蕎麦と同じで、たれにどっぷりつけるのは美味い食べ方とは云えないと思う。

昨今は、カワハギの肝を混ぜる肝醤油を出すところがありますが、ワタシは?です。
肝は脂肪のかたまりで、濃厚です。ふぐじゃなくて、脇役の味になってしまいます。

美味いと思えば、どう食べてもいいじゃないか。と云われればそれまでの話ですが、
いいものは、それなりの遇し方で接しないと、よく味わうことはできないと思います。

(追加)阿じ与志のポン酢醤油は、女将が自慢するだけのことはありますよ。

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ふぐちり鍋 (阿じ与志 広島県福山市)

ふぐちり鍋は、阿じ与志の看板料理だ。

ふぐの切身の他には、下仁田葱、春菊、白菜、椎茸、豆腐、だけ。
ふぐの出汁を味わい、口直しをするためのもので、腹のたしにと、
何でもかんでも、色々あればいいってもんじゃありません。

ポン酢も大切です。羅臼の昆布に、高知土佐山の柚子で決めている。
確か女将のお手製だったと思うが、若女将にきちんと伝承してほしいです。

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阿じ与志のふぐ料理 ふぐちり鍋 (クリックで拡大します)

喰い力のあるちり鍋が、阿じ与志の持ち味です」と、
店主は勝手御免で述べていますが、これは、照れ屋さんの極めて控えめな口上。

最近も、ネットでさんざん調べましたが、
天然の3キロものだけを使ったとらふぐ料理を食わせる店は、ここの他にはありません。
開店以来30年ずっとで、ぶれない。一貫してる。ギネスものです!

喰い力のあるふぐを、ちりなべで食べてみてください。
阿じ与志勝手連が暮れ〆にあたり、大太鼓をたたきました。ドン。ドン。

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ふぐの塩焼き (阿じ与志 広島県福山市)

ふぐなべ皿の最後の切り身を、鍋に入れようとしたら、
店主に「ちょっと、こっちにちょうだい」といわれたので、素直に従うことにしました。
どうやら、焼くようです。

Fugushioyaki

阿じ与志のとらふぐ料理 ふぐ中落ち汐焼き

中落ちを焼くと、少し味醂でも塗ったような表面の色合いをしてます。
店主に聞くと、塩をふっただけ。骨のまわりのコラーゲンが表面に浮いて焼け、
こうなるそうです。阿じ与志のふぐは超でかいから、コラーゲンもたっぷりだ。

ふぐは焼くと香ばしく、また、甘みがぐっと増します。身離れもいい。
ふぐの中落ち汐焼き。かなりいけますよ!

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ふぐ雑炊 (阿じ与志 広島県福山市)

喰い切り料理の〆には、ご飯ものを少し食べるのが流儀です。
本日は河豚を食べたから、やっぱり河豚雑炊がいいですね。

Fuguzosui

阿じ与志の河豚料理 ふぐ雑炊

二代目の正ちゃんが、ふぐ鍋のうまい出汁をきれいに濾して、
薄味に仕立てなおし、黄韮と卵で丁寧につくってくれました。
白菜の漬物に唐辛子が利いていて、丁度いい具合でした。

本日も大満足でご帰宅です。今年もごちそうさまでした。

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天然トラフグと養殖トラフグ。味はどう違う?

天然トラフグと養殖トラフグを見分けることは、外観上は尾ひれで判別できる。
狭いところで飼われ、ストレスがたまる養殖ふぐは互いの尾ひれをかじるので、
まともな尾ひれの養殖ものは少ないそうである。

天然ものと養殖もの。関西では、価格に5倍の開きがあるという。
外観はともかく、味に明確な違いはあるのだろうか?
大新聞の署名入りコラムに、こう書かれていました(注1)

白い身を噛みしめてエビやカニの味がするのが天然、イワシやサバの味が養殖だ。

つたない食経験から、まことしやかなウソだ、と一瞬思いました。が、まてよ・・
かの偉大なるシェフ、ジョエル・ロブション氏のエピソードを思い出しました。

Jol_robuchon

彼は欧米人にたがわず、タコ(ゴムのように硬いそうだ)が苦手だったが、
すきやばし次郎(注2)で出されたタコを食べ、「伊勢エビの味がする」と感激した(注3)

う~ん。彼なら、もちろん違いがわかるでしょうが、はたして、
「エビやカニの味がする」というでしょうか?ぜひ知りたい!

(注1)出典:読売新聞の署名コラム「緩話急題~ふぐの季節~」(2007/12/11)
(注2)ミシュランガイド東京2008でも三ツ星に選ばれた超有名な銀座のお鮨屋さん
(注3)出典:山本益博著「そんな食べ方ではもったいない!」188ページ

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